気がつくとまた更新間隔があいてるので、どうでもいいこと書きます。
俺はコンビニを経営しています。神奈川県内とは思えないほどローカルで、また肉体労働者の方が実に多く、ありていにいって低学歴の町なのですが、それだけに、オヤジとかにはものすごい味わい深いのが多いです。
昨日の朝、俺が店頭でゴミ交換なんかやってると、早速常連につかまりました。
「おい、マスター」
マスターです。だれも店長なんて読んでくれません。もちろん「オーナー」なんて、呼称すら知らないでしょう。いかにも20年前まで海の男だった感じの日焼けした、60歳くらいのオヤジです。小柄ながら頑健な感じの肉体を持っているのですが、酒飲みすぎなのかなんなのか、顔は赤黒いです。
しかも声がでかい。
でかいなんてなまやさしいもんじゃないんです。これじゃ東シナ海の荒海の上を木の葉のごとく翻弄される漁船のうえでも日常会話ができそうです。てゆうか冗談抜きで、周囲の建物に声が反響してるんですよ。至近距離にいる俺に向かって話しかけるのに。
さらにすごいのが、けっこう人通りの多い朝の時間に、それだけ絶望的な大声で日常会話しようとしてる人間がいるってのに、だれも興味関心を払わないんです。つまり、こういうオヤジは町中にふつうに生息してるってことです。
「タバコ吸いかけちまったんでよ! 最後まで吸わねえともったいないじゃねえか! 吸ってから買い物させてもらうからよ! ちょいと勘弁な!」
渋谷の駅前で90ホーンとかの騒音らしいですが、これ、体感の騒音は150デシベルとか行ってるんじゃないでしょうか。とにかく響きかたのケタが違うんですよ。たまにいるじゃないですか。目の前で聞いても10メートル離れても同じくらいの声の大きさに聞こえるような人種って。あの人種が全開で(当人的にはまだ控えめなんでしょうが)しゃべるわけですよ。そりゃうるせえ。まあ、混雑してる道路の向こうとこっちで日常会話する人たちに文句言ったって始まらないんだけどさ……。
このオヤジは、最近ラークマイルドがリニューアルして、フィルター部分が茶色から白くなったのがかなりご不満なのです。
「なーんか軽くなった気がすんだよな! しかもすぐに吸い終わる。なあ! ハイライトとかにすりゃいいのかもしんねえけどよ! あれ吸うと息できなくなんだよ! あははははは! 死ぬな!」
条件反射で「死ねよ」とか言いたくなりますが、そこは俺も大人です。
「私も吸うんで、あんまり人のこと言えたもんじゃないですけど、やめればいちばんいいんでしょうけどねえ……」
「バカ言うんじゃねえよ!!!」
ズッギャーーーン。
190デシベル突破。つかまじで耳痛え……。
「おまえ、俺ァよ、タバコやめねえよ! おまえ俺ァタバコやめるんだったら、人間やめらァな! あははははははは!!!」
「あはははは、ですよねー」
俺は人間やめる気はねえよ。一人でやめれ。
あとそれ覚醒剤のキャンペーンであってタバコじゃないよ。俺もまゆみさんに言われるまで気づかなかったけど。
「んじゃタバコ買ってくるわ! 俺もそろそろ禁煙すっかなあ!!」
そう言いながらオヤジは店内へと消えていきました。
ここまで豪快に矛盾してると、もうツッコミなんて無粋なものです。
てゆうかこのじーさんじゃなかったかなあ、前に「酒のせいでなった病気は酒で治すんだよ!」とかゆってたの……。
次は昨日の夜です。というか、日付変わってもう朝方ですね。5時くらい。
泥酔した20代後半くらいの兄ちゃんと、さらに泥酔した40がらみのオヤジ。俺は一人で夜勤。もう、ドアの外の段階で泥酔してるのがわかったんで、あらかじめ警戒モード。まあ陽気そうな酔っ払いなんで問題は起こさないだろうけど。
オヤジ、いかにも泥酔者らしく、ふらついた勢いでそのままドアに体当たり。バーンと派手な音を立ててドア全開。
店内に足を踏み入れたとたん、
「猫のーーーーーー、えさ!」
「あははははははは」
後ろから入ってきた兄ちゃん爆笑。
……勘弁してくれよ、のっけからこのテンションかよ……。
あとは二人の会話。
「おい、おめえよ、猫だよ。猫。メシ食うんだよなあ、やつら」
「あはははは、食うっスねえ! 箸で!」
「あははははははは、バカ言うなコラ!! 殺すぞ! 猫が箸使うわけねえだろこのボケ!」
「使うわけねえっスよねえ!」
「おめえあれだ、猫はフォークよフォーク! こう……」
ふらつく足でジェスチュア。てゆうかその手つきは完全に箸。
「すげえっすね! 猫、洋食派! ナイフ使うんすか!」
「バカかてめえは! 猫は……」
ペットフードの売場の前に行って、猫缶をざこざことカゴに放り込む。
「魚! 猫はー、魚! 和食派!」
「じゃなんでフォークなんすか! おかしいっすよ○○さーん!」
「そりゃおめえ……難しいこと聞くんじゃねえよ!」
オヤジ、若者の後頭部をばちこーんとブッ叩く。
おめえらうるせえよ……。
が、目的が猫えさであったことは本当らしく、すぐにレジに直行。カゴのなかには20個ばかりの猫缶。いったい何匹家族だよこれ。
オヤジ、俺に向かって、
「猫! 猫ちゃんのー、ごはん!」
「○○さん、これっすよ、このハンバーガー! うまいんすよ!」
若いのが、あとからパンの棚にある人気商品、ハンバーガーを持ってきて、カゴに2個入れる。兄ちゃんのほう、カウンターに手をついて、俺を凝視。
「なあ、マスター!」
またマスターかよ……俺、飲み屋の主人じゃねえっつーの。
「マスター、聞いてる? ここのハンバーガーはねえ……」
ひときわ目に力を込めて、じっくり溜める。
そして、炸裂。ウィンクしそうな勢いで、
「好・き☆」
そのままカウンターの上に頭をがこんと落として、
「うー、飲みすぎたなあ、こりゃあ……」
一瞬でも早くこの騒々しい者どもを店の外に追っ払いたかったので、ちゃっちゃと会計。
「以上で3400円でございます」
猫えさでこんなに買うバカいんのかよ。コンビニで……。
「はいよ。ほら、1億円!」
うるせえ! ただでさえいらいらしてるのにいかにも言いそうなくだらねえオヤジギャグ言ってんじゃねえ! しかも1億円。相当に気がでかくなってんな、こいつら……。
「はい、6600万円お返しです。これでマンションでも買っちゃってくださいよ!」
この手の酔っ払いは調子を合わせてないと本当に絡んでくる可能性があるので、てきとーに相手。
「おっ、マスターわかってんじゃないの。マンションいいねえ。猫ちゃん、一匹に一部屋いけんじゃないのー? えーと、あけみ、さおり、たかこ……」
「○○さん、それ猫じゃないっすよ! 愛人っすよ!」
「バカ野郎おめえ……猫にお酌できんのかよ? え? できるわけねえだろう! ンだよ、え? おめえ……帰るぞオラ!」
あれ。なんか素で機嫌悪いんですけど。
つーか地雷?
え、いまの会話のどこに地雷があったか教えてよ。すごい意味わかんないよ!
まあ、そんなわけで、とにかく泥酔者二人はすんなり帰っていった。
いや。ちょっと待て。
いまレジ打ったえさの半分近く、犬えさだったぞ。いいのかよおい。追いかけていってつっこみたい気持ちでいっぱいだったが、面倒ごとを背負い込むのもいやだったので、放置。
で、しばらく自分の作業やってたら数分で若いのだけ店内に戻ってきた。
おいおい勘弁してよ……。
兄ちゃん、大量のハンバーガーを持ってレジにどさっと置く。
慌ててレジに行った俺の目をまたじっと見る。
「いやマスター、このハンバーガーね、ほんっっっっっっっ」
すっげえ溜め。これが格ゲーだったら即死級の技出ますよ。
「っっとーーーーにうまかったんだよ! これ食うよ。あっためてよ!」
10個あるんですけど。
「え、よろしいんですか? あたためて」
「いいんだよ! あっためてよ! ○○さんが4個で俺が6個な! あの人ほら、カロリー制限かかってるからさ!」
泥酔しててもそういう問題じゃないことくらい気づいてよ、お願いだから……。
で、かなり時間かかってあたため終わったやつを袋に入れようとすると、
「袋いらねえ」
「え、でも持てますか?」
「んだよ。持てねえって言うのかよ!」
じゃあ好きにしろってことで放置。
かろうじてなんとか両腕に抱えたものの、ドアに辿りつくまでに数個落とす。
「ンだよやんのかコラ!」
ハンバーガー相手にキレてます。
拾って渡してあげると、
「お、ありがとよ! おまえんとこの店はいい店だなあ!」
帰ってゆかれました。
このあいだ、酔っ払い二人の声がすべてフルボリュームであったことは言うまでもありません。
疲れました。
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