夢を見た。悪夢だった。
俺は家にいた。でもこの家じゃない、きっと前に住んでいたアパートだ。昨夜MK2と前のアパートが我が家って感じだよね、なんて話したから、その影響かもしれない。
その家には俺以外にねかづけちゃんがいた。
ねかづけちゃんとは。
元になっているのはうさーズのでかすけ。うさぎのくせに二足歩行(遅い)、変なイントネーションで話す。なぜか語尾は~だす。以前はドミナントの意味がわからず気になってしょうがなかったが、最近はどうでもよくなったらしい。趣味は近所のローソンでお買い物をすることとインターネット。ネット上のどこかにうさぎさんたちのコミュニティが存在するらしく、そこに入り浸っている。うさぎ版2chのようなものらしい。現在、高級ペレットであるペレッタ(命名ねかづけちゃん)が欲しくてたまらないのだがローソンには売っておらず、通販での購入を考えている。好きなものは野菜、嫌いなものはMK2。
俺は特になにをするでもなくパソコンに向かっていて、ねかづけちゃんは踊っていた。二足立ちで腰を振りながら、「ボクはかわいいねかづけちゃんだーす。」と、こぽりんの台詞をパクったらしい自己紹介をしている。うさぎだからもちろん無表情。見慣れている俺は気にも留めない。
そこに、一匹の白っぽいうさぎが現れた。ねかづけちゃんより大きく見える。そんな謎のうさぎが、気が付いたら家の中を駆け回っていた。
「なんだ、あれ。どっから入って来た?」
「わからないだーす。」
なんでいきなりうさぎが出てきたのか考える俺。なんとなく見覚えがあるんだが。走り回る謎うさぎを呆然と眺めるねかづけちゃん。
その間も謎うさぎは止まらない。そのへんにある物を蹴飛ばし、棚に置いてある物は薙ぎ倒し、テーブルの上までひっくり返しながら走り続ける。ただでさえ散らかっている家の中は足の踏み場もないほどに、さらに荒らされていく。
なんだ、これは。どうしてこんなことに。ああ、布団を齧るな!そのコードはやめろ!柱はもっとダメだ、大家がうるさい。ちょくしょう、なんでこんなときにMK2がいないんだ。このままじゃヤバい、なんとかしなくては。
俺は謎うさぎを追いかける。だが相手はうさぎ、逃げ足だけはやはり速い。なかなか捕まえられない。しかも、飲みかけのパインティーをこぼされたおかげで床はベタついているし、物が散乱していて思うように動けない。もうちょっと、というところまで追い詰めてもするりと逃げられてしまう。それを見ていたねかづけちゃんが地団駄踏んで前足を振り上げ叫ぶ。
「なにやってるだすかーっ!ちゃんと捕まえるだーす!!」
「お前がやれ!お前だってうさぎだろうが。」
「そうだーす。ボクはかわいいうさぎのねかづけちゃんだーす。」
腰を振ってポーズを決める。
「いいから捕まえろ!このままじゃ家がめちゃくちゃになる!」
「もうなってるだーす。」
ため息を吐きながらねかづけちゃんが、いかにも嫌そうに歩き出した、二足で。相手は四足、しかも走っているのだ。追いつくはずがない。
「四つ足で走れ!」
「ねかづけちゃんは二足歩行なうさぎさんだーす。」
方向転換して向かってきた謎うさぎを、今だっ!というタイミングでひょいっと避けるねかづけちゃん。ダメだこいつ、使えねえ。
「びっくりしただーす。」
「お前、やる気ねーだろ!?避けてどーすんだっ。」
「こういうことはMK2に任せるだーす。」
そこへMK2が登場。あんた、今までどこにいた。
「さっきからなにやってんの?うわっ、家の中がすごいことに!」
「すごいことに!、じゃねえよ!いいからあの謎うさぎを捕まえろっ。あいつが犯人だ。」
「お、おう、なんかわからんがわかった。」
俺とねかづけちゃんがイライラしながら見守るなか、謎うさぎ以上の破壊力でものを壊しながら追いかけるMK2。
「これ以上あんたが壊してどうする!?早く捕まえろっ」
「そうだーす、ちゃんとやれだーす。」
「そんなこと言ったって……あっ、捕まえた!!」
俺は落ちていた袋を掴んで、MK2に向けて広げる。
「これに押し込んで、そんな野良うさぎ、とっととどっかに捨ててこい!」
「うさぎはねかづけちゃんだけで充分だーす。」
ここで目が覚めた。起きて真っ先に部屋を見渡した。良かった、やっぱり夢だ。
今まで、これほどげんなりする夢を見たことはなかったと思う。なんでこんな夢を見たのだろうか。それと白っぽい謎うさぎって、どう見てもちびすけなんだが。
そういえば寝る前、ちびすけをケージから出した。一畳くらいのサークルを作り、その中で遊ばせていた。ちょうど俺の真後ろだ。パソコンに向かう俺の背後から、ぶちっぶちぶち、ぶちっ。振り返ると、畳をむしって食べている。畳を食うな。
ガガガガッ、ガリガリガリガリ。今度はなに。サークルを齧るな。
コリコリコリコリ。牧草か、ならいいんだ。
ダンっ。ダンっ。なんだよ、なに怒ってるんだよ。
背中になにかが当たる。サークルだ。イライラちたちびすけが、鼻でサークルを押して俺にぶつけているのだ。全然画面に集中できない。かれこれ2時間は我慢したが、限界だ。ペレットでおびき寄せ、ケージに帰ってもらった。
そうかちびすけ、お前か。お前のせいでこんな夢を見る羽目になったのか。
最近のコメント